野良犬
ここら辺だけなのかもしれないのだが野良犬のシルエットがおかしい。
そんなに多くないがたまに野良犬がふらふらと道を歩いている。
そのほとんどが胴が長くて足が短い。顔は大きい。でもミニチュアダックスフンドやチワワのような可愛さはない。なんともアンバランスなのだ。
わたしが予想するのは、チワワやミニチュアダックスを以前飼っていた人が世話しきれなくなって捨て犬となり、もともとの野良犬との間に子供をもうけた結果なのではないかという案である。
最初は彼らを見ていてなんか気持ち悪いなぁって思っていたのだけど、よく見るとなんとも言えないかわいさがあることに気づく。目が合うと彼らは立ち止まりニタっと笑う。彼らは笑っているつもりはないのかもしれないがわたしには笑っているように見えるのだ。そしてニタッと笑った口元がたまに受け口だったりするからこれまたたまらなくかわいいのである。
以前長沙市で暮らしていた時、口元が紫色になっている犬をよく見かけた。なんでだろうとずっと不思議に思っていたがある日気が付いた。噛みタバコである。またの名をビンロージっていうやつである。
長沙人は噛みタバコが大好きだ。よって口や歯茎がすごく汚い。紫色に変色していたり、どす黒いピンクだったり。自分の責任で噛むのはいい。ただこどもたちにも噛ませている人もいて歯がないこどももたまにいた。そして噛み終わった後の残りカスというのだろうか、茶色くなった塊を道路に吐き出すので道は茶色い落し物でいっぱいだった。その茶色いカスを犬がエサと間違えて食べる。それで彼らの口元はいつも紫色だったのである。そして彼らもほとんどが胴が長く足が短い犬だった。
ここで野良犬を見かける度に口を紫にして無邪気にブラブラ歩いていた長沙の犬たちを思い出す。そしてここの野良犬たちがニタッと口を開ける度に口元が紫ではないことに安心するのである。
スタイルの悪いアンバランスな野良犬たちは今日もプラ~っとたくましく生きている。
そしてわたしはこのブサイクな犬たちに振り向きざまにしゃくれ顔で微笑みかけられ癒されて生きている。