被り物
今日も雨が降ったり止んだりのどよんとした日であった。
本降りではなく、パラパラ雨なので傘をささない人も多い。
特に男性はさしていない人が多かった。
海外で生活していて不思議に思うことの一つは、余程の雨じゃないと傘をささない人が多いということである。確かにパラパラ雨は意外とそんなに気にならない。荷物をたくさん持っているときは傘がない方がいいかもとわたしもマネたくなるのだが、いやいやいやと踏みとどまる。汚染された雨を浴びるのはやはり良くないだろう。
特に男性たち。髪の毛の将来を気にするなら傘をさすべきだとわたしは勝手に思うのだ。多分余計なお世話だろう。
今日見かけた年配のご婦人。綺麗な格好をして歩いておられたが、頭にはスーパーの袋を被っておられた。それでも無造作に被るのではなく、ちゃんと頭の形にして取っ手の部分はクルクルと巻かれて折りたたまれていた。
今日は降ったり止んだりのお天気。傘を持たずに家を出てしまったのかもしれない。急にパラパラと降ってきて、汚染雨を防ぐべく考え出された策なのであろう。
しかし、いくら傘を忘れたからといって、また汚染雨を気にするからといって、コレをやるくらいならわたしは濡れることを選ぶであろう。
日本でこういうことをすれば振り返られること必至。ツイッターでつぶやかれる可能性も高いのである。現にこうやって日本人のわたしにブログに書かれているではないか。
しかし、このご婦人は恥ずかしげもなく、堂々とスーパーの袋帽子を被っていて、道行く人も振り返ることもわたしのようにまじまじと見ることもないのである。
ここまで人の目を気にしない中国。人がやっていることも気にならない中国。嫌いじゃない。日本にいるよりのびのびできる。
しかし、日本社会に戻れなくなってはいけないという気持ちがわたしをその自由の流れから呼び戻すのである。
頭は濡れなくとも、顔は完全に濡れていて細目で前へ進む老婦人を眺めながらそんな事を思うのであった。